この特集では、難病や障がいをもった愛犬とその飼い主さんの、闘病や暮らしの様子をレポートします。
今回ご紹介するのは、脊髄にできた悪性腫瘍を切除する大手術を乗り越え、車椅子で散歩を楽しむイングリッシュ・コッカー・スパニエルのポッキーくんのお話です。
不屈の精神で今も車椅子で毎日散歩を楽しむポッキーに励まされています!
日本に住んで30年以上たつBさんは、妻と愛犬ポッキーくんほか2頭のイングリッシュ・コッカー・スパニエルと暮らしています。ポッキーくんは14才のころ、脊髄に悪性腫瘍ができ、歩行が困難になりました。
ポッキーくんは外ではBさんが自作した車椅子、家の中でほぼ寝た姿勢に。自力での排尿も難しいポッキーくんのお世話の工夫を聞きました。
続きを読む
体に合わせた車椅子を2台手作りして、デコボコ道用とアスファルト用と使い分ける
車椅子のパイプ部分は塩化ビニールの水道管に丸木を入れて補強したものを使用。車輪を変えて2種類を作り、アスファルト用は自転車の補助輪を、野原などのデコボコ道用は芝刈り機の車輪を使いました。
続きを読む
車はケージが楽に入るミニバンにして、散歩のときはソフトケージを固定して乗せる
毎朝の散歩には3頭の愛犬と車で行きます。車は車高にゆとりのあるミニバンを選んだそう。ポッキーくんは車内で転倒しないようトランクに固定したソフトケージの中に入るようにします。
続きを読む
家ではほぼ寝た姿勢なので、大きめのマットにトイレシーツを敷いて寝かせる
家の中での車椅子の使用はぶつかって危険なので、ほぼ寝た姿勢で過ごします。弾力性のある大きめの犬用ベッドにトイレシーツを敷いて寝かせます。
続きを読む
おなかがゆるくなりやすいので、消化吸収のよいトッピングを加えたフードを与える
手術後おなかをこわしやすくなったので、ゴハンはシニア用のドライフードに消化のよい手作りのトッピングを加えます。よくゆでた野菜各種にゆでた豚や鶏肉のひき肉などを加えます。
続きを読む
自力で排尿できないので毎回膀胱を絞って排尿させ、排尿後はかぶれ防止の軟膏を塗る
一日に何度か夫婦が交代でポッキーくんの膀胱を絞って排尿させ、その後尿道のまわりをシャワーで洗うようにします。家では寝た姿勢で過ごすので、尿によるかぶれが起きないよう、皮膚を保護する軟膏を塗ります。
続きを読む
ポッキーくんは現在、動かせる前足を使って車椅子で毎朝の散歩を楽しんでいます。
「わが家では、雨の日でも雪の日でも、毎朝6時に近所の公園へ散歩に行くことを日課にしています。今ではたくさんの散歩仲間ができて、ポッキーも友達犬と会うのが何よりの楽しみなんです。じつは、妻との出会いもこの公園で、ポッキーがつくってくれたんですよ(笑)」とBさんは出会いの秘話も話してくれました。Bさんの妻もイングリッシュ・コッカー・スパニエルの愛犬がいて、偶然にもBさんと同じ時間帯に公園に散歩に来ていたそう。そこから二人の交流が始まったとのこと。
続きを読む
「ポッキーは、私の心の傷も癒してくれて、妻との出会いももたらしてくれました。脊髄の大きな腫瘍が発見されたときは、何としても命を救ってあげたかった。手術に踏み切ったのは大きな賭けでしたが、今こうしてまた散歩にも行けるようになって本当に幸せです。これからは腫瘍の広がり具合に注意しながら、残されたポッキーとの時間を大切にしていきたいです」と最後にBさんは話してくれました。
続きを読む
出典/「いぬのきもち」2024年9月号『困難と闘う!……その先のしあわせへ』
写真/田尻光久
写真提供/Bさん、Nさん
取材協力/相川動物医療センター
取材・文/袴 もな
※掲載の情報は「いぬのきもち」2024年9月号発売時のものです。
記事一覧に戻る